奥に眠る物語
営業時間が終わり、看板を片して自分のロッカーに行き、荷物を手早くまとめて出ようとした時だった。

「お前、アイツのとこいくのか」

急にオーナーが声をかけてくる。

私は否定するような要素はないので、首を縦に振った。

そして、私が出ようとした瞬間だった。

目の前が暗くなる。

同時にガンッ!!とドアを殴る音がする。

私が後ろを確認すると、肩がオーナーとぶつかった。

「え、川上さん・・・?」

私がつぶやいた瞬間、ギュッと抱きしめられた。

心臓がドキリと跳ね上がる。

なんで、なんで私・・・?!

顔が熱くなる。

オーナーから、タバコの独特の香りがする。

「・・行くな。 アイツはダメだ」

否定しながら、抱きしめる腕の力を強めてくる。

わけが分からない。なんでこんな状況なんだろうか。

「・・どう、して」

「ダメなものはダメなんだ」

耳元でつぶやかれ、また心臓が跳ね上がる。

鼓動は高鳴っていくばかり。

私は混乱しながら、オーナーの腕をギュッと握った。


 
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