狙われし王女と秘密の騎士
ぎこちなく顔を上げたルカは驚いたように目を見開いた。
殴られたのだろうか。
服には血の跡も見られた。
その痛々しい姿に顔を歪める。
「なんの役にも立たない女なんだ」
サルエル国王はつまらなそうに呟く。
「宰相もこの女も。何にも喋らない。役立たずなんだよな」
そしてドンッとルカを蹴り飛ばした。
縛られているルカは床にゴロンと転がる。
苦痛で顔を歪め、うめき声をあげた。
「ルカっ!」
「触るな!」
一瞬で腰の剣を抜いたサルエル国王はルカに剣を突き立てる。
それに踏み出した足はビクッと止まった。
「やめて」
「ククク。その恐怖の顔も美しいなぁ。この女を殺されたくないなら、私の所へおいで?シュカ王女。私のものになりなさい」
嫌らしくサルエル国王は笑った。
サルエル国王の目的は私を手に入れることだ。
私は歯を食いしばり、踏み出そうとすると隣の父王が手をつかんで引き留めた。
「ならぬ」
「お父様っ」
「お前は渡せぬ」
父王は冷静だった。
当然だろう。
一国の王女と一介の侍女。
比べることなく、それはわかりきっている。
しかし、私にとってルカは侍女であるが大切な友人でもあった。
「ならこの女は殺してしまおう」
「やめてっ!」
サルエル国王が高く剣を振り上げる。
私はお父様の手を振り切り、ルカの元へ走り出していた。