狂愛ゴング
もしかしたらもう、興味なんかないかもしれない。
私のことなんてもう記憶から消し去ったかのように、話しかけてこないかもしれない。
——『惚れるなよ』
そう言った。
昨日のことで、私の気持ちになにかしら気づいたってなにもおかしくない。むしろなにも思わない方がおかしい。
あいつのことだから、きっと気づいたはず。だからこその、あの態度だった。
嫌いな相手だから、私も新庄が嫌いだから……一緒にいて思う存分罵ることが出来た。そんな関係だった。
そこに、恋愛感情は、邪魔でしかない。
だから、私の気持ちに気づいた新庄はもう、私に構ってくることはないだろう。
私達の、よくわからない恋人という関係は、これで、きっと終わり。
——それが一番怖いだなんて。
「変態かもしれない、私……」
新庄のことはただの鬼畜だと思っていた。
今も確信を持って彼は鬼畜だと思っている。
あんな男に告白する女の子の気持ちなんて全く理解できなかった。バカにだってしていた。
なのに……なんでこんな気持ちを抱いているのか。
いつの間に、こんな気持ちになってしまったんだろう。
関わりたくなかったはずなのに。
頑なに、それはもう頑なに拒んできたはずなのに。
今ではもうそんな気持ちがなくなってしまってる。氷が溶けて、水になって、蒸発してしまったみたいに。もともと、そこにはなにもなかったかのように。
頑なに、必死に、新庄を好きじゃないふりをしていた道江と、今なら親友になれるかもしれない。
「クソが」
自分と、新庄に向けての精一杯の、文句だ。
ぎゅうっと目を瞑って、なにも考えないようにして布団の中で小さくうずくまった。