ただ、大好きでした。
…あれ?なんで?
おかしいな。さっきまで、そこにいたと、思うのに。
不確かな感覚だけじゃ、まばたきをした、その、ほんの一瞬だけでも、
蒸気のように空気に融けて、消えてしまう。
必死で型どった、あたしの指の、隙間から。
まるで最初から、存在して、いなかったみたいに。
─…ねぇ、蒼井?
両想いになれないなら、どうしてあたしは貴方に、出逢ってしまったんだろうね?
出逢ってしまったら、
好きにならないはず、ないのに。