銭コ乗せ
俺はそれを見届けた。

草むらまでは、かなり距離があった。

十円を追いかけて、捕まえる自信はあった。

捕まえさえすれば、草むしりで土まみれになることはない。野球を楽しむ子供達に、とられるデメリットもなかったはずだ。

捕まえる自信はあった。

それでも俺は、追いかけなかった。

おっちょこちょいに見られる自分が、恥かしくて強がったからだ。


俺はとことん、甘かった。

「僕が見付けたんだぁー!僕のだぞぉ!」

たっぷり膨れたデブが集合をかけると、手下のガッリガリの子供達が帽子を投げ捨て、俺の周りを囲んでいった。

迷うこと数秒。

俺は拳を作ってデブの頭に打ち付けると、クッシャクシャの泣き顔にさせ、デブと同じくガキどもを泣きじゃくらせた。
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