胡蝶蘭
ちらりと誓耶が視線をそらした瞬間、男はテーブルを越えて飛び掛かってきた。



「うああっ!?」



がっちりと腕を掴まれる。



「なんだよ、放せって!」


「無理無理。
こんなオイシイ仕事、誰が逃すかよ。」


「何!?」



思い切り身体をよじっても、誓耶の腕をつかむ男の手は剥がれない。



ガシャンと音がして、コーラが畳みにこぼれた。



「騒ぐなよ?」



腰に手が回された。



騒いだらどうなるかわかってるな?



笑いを含んだ声で、囁かれる。



どうせ、騒いだって騒がなくたって同じなくせに!



いや、という誓耶の拒絶は当然の如く聞き入れられず、誓耶は外に連れ出された。



男は用心深く辺りをうかがい、素早く外に走り出た。



「どこ連れてく気?」


「内緒。」


「何する気だよ。」


「ん?」



男は答えず、にやっと笑った。



何をされるか、もう予想はついてる。



誓耶は必死で身体をよじった。




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