胡蝶蘭
「茉理子があんたに頼んだの?」


「ああ。
殺してやりたいくらい憎い女がその居酒屋の一番角の座敷にいるから、好きなようにしてくれって。」


「きったねぇ…。」


「よく知らねぇけど、お前も可哀想な奴だな。
あの女もそうとうイカれてたみたいだぞ。」



じゃあ放せよ。



「あたしじゃなくても、もっといい女引っかけろよ。」


「やだね。
俺って結構、無理やりプレイが好きなの。」


「気持ち悪いことぬかすな!」



空いていた腕で、思いっきり男の顔を殴る。



「いってぇ…。」



これで逃げだせるかと期待したが、男は踏みとどまってさらに強い力で誓耶を引っ張る。



「お前、覚えとけよ。」



背筋に寒気が走った。



「自分の置かれた状況がわかったうえでこんなことしてんだろうな?」


「やだ…。」


「やだじゃないよ。」



男はずんずんと歩いていく。



誓耶は文字通り引きずられ、ときに殴られ、無理やりに歩かされた。



「と、ここでいいか。」



男が足を止めた。



誓耶は様子をみるために顔を上げる。



そこはどうやら公園らしかった。



夜の公園は、薄暗い街灯がたっているだけで人気がなかった。




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