胡蝶蘭
自分の家なので暗闇でも慣れている偉槻は、さっさと自分だけくつを脱いだ。
少女は身体を縮めるようにして、玄関先に突っ立っている。
「入って。」
偉槻はもう一度促す。
と、少女は恐る恐ると言った感じでくつを脱ぐ。
そしてまた、恐る恐る部屋に上がった。
「お邪魔します。」
「……そんなに遠慮すんなよ。」
逆に偉槻が居心地悪い。
「そこ、風呂。
隣、トイレ。」
無愛想な偉槻の説明に、少女は必死でついてくる。
このアパートは古いかわりにそこそこ広い。
一部屋、客用に空きがある。
なかなか使われることはなかったが、今日やっと役目が回ってきた。
今までは偉槻の楽器が眠っていた場所だ。
「で、ここがあんたの部屋だ。」
「いいのか、あたしがこんなとこ使って。」
「いいも何も、物置だろ。」
少女は聞いているのかいないのか、返事を返さず、部屋を見回した。
6畳ほどの、長方形の部屋。
偉槻は続いて中に入り、布団を敷くためのスペースを作った。
足でダンボールを押しのける。
幸い、埃は積もっていなかった。
この間、掃除をしたのだ。
几帳面な性格が幸いした。
「布団、持って来るから、その辺で待ってろ。」
「手伝う。」
「いい。
病人だろ。」
待ってろよ、と念押しし、偉槻は一旦部屋を出た。
押入れに確か布団がしまってあったはずだ。
物を押しのけ押しのけ、目当てのパックされた布団一式に辿り着く。
偉槻は力を込めてそれを引っ張り出した。
少女は身体を縮めるようにして、玄関先に突っ立っている。
「入って。」
偉槻はもう一度促す。
と、少女は恐る恐ると言った感じでくつを脱ぐ。
そしてまた、恐る恐る部屋に上がった。
「お邪魔します。」
「……そんなに遠慮すんなよ。」
逆に偉槻が居心地悪い。
「そこ、風呂。
隣、トイレ。」
無愛想な偉槻の説明に、少女は必死でついてくる。
このアパートは古いかわりにそこそこ広い。
一部屋、客用に空きがある。
なかなか使われることはなかったが、今日やっと役目が回ってきた。
今までは偉槻の楽器が眠っていた場所だ。
「で、ここがあんたの部屋だ。」
「いいのか、あたしがこんなとこ使って。」
「いいも何も、物置だろ。」
少女は聞いているのかいないのか、返事を返さず、部屋を見回した。
6畳ほどの、長方形の部屋。
偉槻は続いて中に入り、布団を敷くためのスペースを作った。
足でダンボールを押しのける。
幸い、埃は積もっていなかった。
この間、掃除をしたのだ。
几帳面な性格が幸いした。
「布団、持って来るから、その辺で待ってろ。」
「手伝う。」
「いい。
病人だろ。」
待ってろよ、と念押しし、偉槻は一旦部屋を出た。
押入れに確か布団がしまってあったはずだ。
物を押しのけ押しのけ、目当てのパックされた布団一式に辿り着く。
偉槻は力を込めてそれを引っ張り出した。