胡蝶蘭

シンゴ トノ ワカイ







誓耶は端的に男に礼を言い、アパートを飛び出した。



せっかく打ち解けたと思ったのに、彼は...。



いい、別に。



もう会う事もないんだし。



ケータイを匡にとられてしまったので、慎吾に電話をかけることも出来なかった。



仕方なく連絡なしに慎吾の家に向かう。



いるんだろうか。



まぁ、仕事をしているのかわからないほど、家にいることがほとんどなので、確立は高い。



運送の仕事に変わったとかなんとか言っていた気がするが…よく知らない。




誓耶は足を止めて、上を見上げた。



マンションの慎吾の部屋は、カーテンが閉まっていた。



いるのか?



いつも慎吾はカーテンを閉めているので、それで判断することは出来なかった。



「慎吾、怒ってんのかな。」



飛び出したまま会っていない。



会ってなんて言おうか。



謝るか?



でも、自分が悪いわけじゃない。



謝るんなら、話してゴメンと言うくらいだ。



「よし。」



取り敢えず、会ってみよう。



誓耶は勇気を出して、足を踏み出した。





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