胡蝶蘭
シンゴ トノ ワカイ
*
誓耶は端的に男に礼を言い、アパートを飛び出した。
せっかく打ち解けたと思ったのに、彼は...。
いい、別に。
もう会う事もないんだし。
ケータイを匡にとられてしまったので、慎吾に電話をかけることも出来なかった。
仕方なく連絡なしに慎吾の家に向かう。
いるんだろうか。
まぁ、仕事をしているのかわからないほど、家にいることがほとんどなので、確立は高い。
運送の仕事に変わったとかなんとか言っていた気がするが…よく知らない。
誓耶は足を止めて、上を見上げた。
マンションの慎吾の部屋は、カーテンが閉まっていた。
いるのか?
いつも慎吾はカーテンを閉めているので、それで判断することは出来なかった。
「慎吾、怒ってんのかな。」
飛び出したまま会っていない。
会ってなんて言おうか。
謝るか?
でも、自分が悪いわけじゃない。
謝るんなら、話してゴメンと言うくらいだ。
「よし。」
取り敢えず、会ってみよう。
誓耶は勇気を出して、足を踏み出した。