胡蝶蘭

ツウジョウ ノ ヒビ








案の定、店に出勤すると店長から声がかかった。



「おう、偉槻。
嬢ちゃんはどうなった?」


「帰りました。」


「そうか。
様子はどうだった?」


「さぁ。」


「何だよ機嫌悪りぃな。」



口を尖らせて厨房に引っ込んだ店長と入れ替わりに、田中が偉槻に絡みついてくる。



「なぁなぁ、あのあと彼女どうなった?
抱いた?」



思い切り力任せに頭を殴りつける。



そんなわけないだろ。



殴るだけ殴って、偉槻は答えずにその場を離れた。



面倒くさい。



なんならあの時、田中に面倒を押し付けておけばよかった。



従兄の始末をどうするかが見ものだったのに。



まだ出勤時間よりも早いので、偉槻は比較的ゆっくりと着替えを始めた。



あのあと、あいつはどうなったんだろう。



それが気になって仕方ない。



行くあてがあるらしいことを口走っていたが…。



まぁ、俺の知った事ではない。



パタンとロッカーを閉じると、偉槻は厨房へと向かった。












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