胡蝶蘭

トシ ガ アケル








年明けが間近だ。



もう、あと一週間程だろうか。



正確な日にちはわからないが、だいたいそんなもんだろう。



偉槻は運送の倉庫裏で煙草を口にくわえた。



寒くて手がかじかむ。



そして、今は夕方だ。



余計に冷え込む。



寒さのせいで、上手く煙草に火がつかなかった。



吐き出した煙が、曇天に昇っていく。



煙と黒い雲が、一体化して見えた。



ああ、寒い。



冷たく吹き抜けた風に、ぶるっと身体が震えた。



それにしても店長め、いきなり貸し出しやがって。



温かい店の中で働くつもりでやってきた偉槻に、いきなり運送を手伝ってこいと言い渡したのだ。



なんの防寒対策もしていなかった偉槻に、ウインドブレーカーを一枚羽織らせて、送り出した。



あれぁ、鬼畜だ。



とか言いながらも、店長が憎くないのだから、感情のやり場に困る。



偉槻は乱暴に煙を吐き出した。



と、そのとき後ろから声がかかった。




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