胡蝶蘭
トシ ガ アケル
*
年明けが間近だ。
もう、あと一週間程だろうか。
正確な日にちはわからないが、だいたいそんなもんだろう。
偉槻は運送の倉庫裏で煙草を口にくわえた。
寒くて手がかじかむ。
そして、今は夕方だ。
余計に冷え込む。
寒さのせいで、上手く煙草に火がつかなかった。
吐き出した煙が、曇天に昇っていく。
煙と黒い雲が、一体化して見えた。
ああ、寒い。
冷たく吹き抜けた風に、ぶるっと身体が震えた。
それにしても店長め、いきなり貸し出しやがって。
温かい店の中で働くつもりでやってきた偉槻に、いきなり運送を手伝ってこいと言い渡したのだ。
なんの防寒対策もしていなかった偉槻に、ウインドブレーカーを一枚羽織らせて、送り出した。
あれぁ、鬼畜だ。
とか言いながらも、店長が憎くないのだから、感情のやり場に困る。
偉槻は乱暴に煙を吐き出した。
と、そのとき後ろから声がかかった。