初恋の向こう側

その帰り道、家の近くの通りを歩いている時だった。


「なぁ、ヒロ?
三年の成沢って知って……」


昼間、鈴井達と交わした会話が気になって直接訊こうとしたんだけど。


「あーっ !」


ヒロが大声を出して急に立ち止まったもんだから、言いかけた言葉をそこで飲み込んだんだ。


「なんだよ! いきなりデカい声出して」

「ねぇ、ここってオークの家じゃない?」

「え?」


ヒロの視線を辿ると、古ぼけた二階建ての建物が道路脇に佇んでいた。

【きく江寿司】と書かれた看板が脇についているが、一階にある店舗は数年前に閉店したままだ。


“オーク”というのは、この家に住む一人息子のあだ名で……といっても、俺とヒロの間だけで呼んでいた名前なんだけど。

ファンタジー物の映画やゲームに登場するオーク。その怪物に外見や性格が似ていることからつけたあだ名。

俺等より二つ上のオークは体が大きく乱暴者で、町内の子供達の中にいつも君臨していた。

弱い者イジメをこよなく愛し、ターゲットを見つけては好き勝手やりたい放題だった。


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