初恋の向こう側
無言のまま落ち着かない様子の小野崎。
…やっぱりか……。
ヒロとの会話の内容はさ ”アレ” なんて意味有り気に言ったけど、なんてことはない。
ヒロが親父さんの部屋で見つけたという古いマンガの続きを、俺のバイト先である古本屋で探してきてと頼まれた、ただそれだけの事なんだ。
先週10巻から15巻までを持ってきたから、今日もそのくらい調達すればいいだろう。
「じゃあ、あたし部活だから。
梓真、また夜にね?」
「うん。あとでな」
自分の教室へ帰って行ったヒロ。
そして小野崎も、とっても神妙な顔をしながら何も言わず教室を出て行った。