蝉恋
「その人を探してもう一週間たってしまった。もう僕には力が残ってないんだ」
私はなにも言わずに彼に抱きついていた
いや正確には聞こえていなかったのかもしれない
そのあとに言った言葉も
「僕セミだからさぁ・・・」
その言葉が届いた瞬間かわからない
ぐちゃ
私の胸に何かが刺さった
鈍い痛みが体中を支配していく
さっきまでの暖かさが消えていく
そして体に何かが入ってくるのがわかった
それは体の中で動き回る
すこしずつ私が死んで逝くのがわかった
そして私が完全に死ぬ瞬間耳元で力なく囁く彼の声が聞こえた
「君がセミなら良かった」