妖恋華
終業の鐘が校内に鳴り響く
それと同時に起立、礼の号令がかかる
授業の堅苦しさから抜け出したことに伸びやら欠伸をする
そんな中、青が席を立ち、教室から出ていくのが見えた。
乙姫もそれに続くように席を立ち、後を追う
そのあまりに早い行動に凜は呼び止めることもできず、あっと小さく声を漏らした
たたた、と小走りで青の後を追う
「青…!」
縮まらない距離に、ついには名前を呼んだ。すると、青は思いの外あっさりと足を止めてくれた
しかし、振り返ることなく前を向いたままである。
不思議に思った乙姫が声をかけようと口を開きかけたとき、青から言葉が紡がれた
「…何の用だ」
怒気の含まれた声色に思わずびくりと肩を跳ねさせる
「えっと…どこに行くの?」
本当はそんなことが聞きたいわけじゃない。
ただ、やはり様子が変な気がして放って置けなかった。
「お前には関係ない」
ぴしゃりと冷たく言い放つと青は再び歩を進めだした
「せ、青…!」
戸惑いながらも咄嗟に名前を呼んだ乙姫を青は顧みた
「俺の名を呼ぶな」
そう告げた青の瞳は出会ったあの日向けられたものと同じだった
近づいたと思った距離は、現実に歩を進めていく青との距離のように確実に開いたのを感じた
乙姫は遠くなっていく青の背をただ呆然と見送るしかなかった
名を呼ぶなと言った彼は冷たい瞳だった。けれど、そこにはやはり何かを耐えるような苦痛が見受けられた
一体何があったというのか。家でも学校でも普通だった。
そう。彼だ。彼に会ってから変わった
そう思ったときには駆けはじめていた。向かう先はもちろん紅夜の元である