かけがえのないキミへ
『行くな』と言って、綾音の手を引いて、唇にキスが出来たらいいのに…
だけど今の俺はそれすら出来ない。
綾音に背中を向けて、悔やむことしか出来ないんだ─…
俺は自分の部屋に行き、携帯を操る。
そして誰かに電話をかけた。
サヨナラしなきゃ。
この人とも…
『あ…先生?』
その相手とは先生だった。
こんな関係を続けていられない。
先生にだって旦那がいるし、俺には綾音がいる。だから、終わりにしなければ…
《怜君?珍しいわね、どうしたの?》
先生は俺の電話にすぐ出てくれて、俺は何から話そうかと考えていた。
『先生に話があるんだ…俺…』
《言わなくていいわ。なんとなくわかるから。終わりにしましょう…でしょ?》
『え…?』
まるで先生に心を読まれたかのようだった。
先生は俺が今から言うことを、自分から言い出した。