かけがえのないキミへ
いつもより声を低くして話す。
もしかしたらこれが原因なのかもしれない。
《…なに?どうかした?》
やっぱりな、鈍感な梨花でさえ、気付いたようだ。
『話があるんだ。電話では言いにくいから、明日、学校で話そ?』
電話越しから、物音すら聞こえてこない。
梨花は俺の話を聞いているのか?
《…嫌よ、どうせ悪い話なんでしょ?》
いつもの高い声の梨花はどこに行ってしまったのか。
今の梨花は、その声をどこかに忘れたかと思わせるくらい、低く悲しそうな声だった。
『…明日話そ?』
《聞きたくない。知ってることを、改めて聞きたくないよ。好きな人から》
『は?』
梨花は突然訳のわからないことを言い出した。
知ってること?
どういう意味だ?
『どういう意味?』
《とにかく、明日話さないから》
しまいには怒ったような口調で、俺の電話を切った。