もっと、生きてほしかった……




―10年前―



「ただいま〜!」


僕は医者になるため、毎日塾に通い帰るのは11時を回っていた。



「あら?
蒼[ソウ]お帰り。

毎日ガンバってるわね。」




そう言ってほんわか笑ってくれる母さん。



僕は、医者になりたいと言った時ガンバれと素直に応援してくれた父さんと母さんが大好きだった……。



そして何より、
僕が医者になりたい理由……――――



それは





姉貴を助けるため――――



「当たり前だよ!
僕は姉貴の病気を治すんだから!!」




今思えば、何て理不尽なことを考えていたんだとつくづく思う。



姉貴は、

まだ当時にはなかなか治らないとされていた



“肺結核”


と言う病気におかされていた―――。




そう。


今の海斗くんと同じ、肺結核に……――――




「そうだったわね!
ちゃんと後悔しないようにガンバるのよ!」




“後悔”―――?


あの時の僕は、
母さんの言葉の意味に気づかなかった…。



「うん!
あっ!明日、僕が姉貴に荷物届けにいくよ!」



「あらそう?
じゃあ、ヨロシクね?」



「うんっ!」




ただ、姉貴を助けたい――――


そんな思いだけが、
俺の頭や心を支配していた………



無謀すぎたんだ――。


あの時の僕には…………




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