小悪魔術師キス・ディオナ
「あ、あなた方は…」
「ああ?」
「あなた方は人ですかっ、それでも!
…なぜ、こんな酷い事を…」

涙を流し、悪鬼那に訴えかけるかぐや。非日常的な事が急に起こった為、一瞬何事が起こったかが理解できなかった町人達も、一人の少女が暴漢の手に掛かって、今から恐ろしい事をされそうになっている事にようやく気づき、わめきだした。

「静かにしねえか!」

地面に叩きつけられた大きな鉞の、地震にも似た轟音が、見物客達のわめき声を封じ込めた。そしてそんなかぐやに、悪鬼那は言った。

「仕方がねえなあ、冥土の土産だ、じっくり拝みな、そら!」

悪鬼那とデブは、人から姿を変えた。悪鬼那は、鉞を持った化け物牛に、デブはぎらぎらした目に鋭い牙を持ったゴブリンに変身した。

「わっ、わあっ!モンスターだっ!
人の姿をしていたから、門番兵がスルーしてしまったんだ!」
「この二人はモンスターだったんだ!」
「門番兵を呼びに行こう!」

見物客がまたわめき出すと、それに応じて、再び鉞の轟音が響いた。
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