魔王に捧げる物語
翌朝。
陽が高くなった頃に起きたミラの前にニルはいなかった。
特に気にすることもなく、イシュやスーと話しながら食事をとり、終わってからはぼんやりと外を眺めた。
考える事はたくさんあったし、ニルの不在は都合がよい。
結局、部屋に閉じこもり1日を過ごした。
その日、ニルは帰ってこなかった。
彼は人ではない、だからその日のうちに帰らなかったとしても、何かに困る事はないのだろう。
そう思えばなんてこともないと、
あまり深く考えずに過ごし、気づくと何日も過ぎていった。
そんなある日、ぼんやりと外を眺めていると、階下の庭を歩く青年を見つけた。
この城に来てから、ニルとイシュとスー以外の誰かと接触した事のなかったミラはつい、声をかけてしまった。
「あなた、こんなところでどうしたの?」
すると、ゆったりと歩いていた青年がキョロキョロとして、やがてミラに気づく。
顔を上げた青年は、銅色の髪と瞳で、これといって目立つこともない村人のような出で立ちだ。
見つめた笑顔が人なつっこく可愛らしい。