魔王に捧げる物語
何か落としたのか、忘れたのか………もしかしたら物とは限らないかもしれない。


ミラの知る限り“眷族”たちは結構変わっている。


そのため見当がつかない。
そもそも彼が人なのか、そっちの住人なのかも微妙だ。


普通の人がどういう人なのかもミラにはよくわからない。



いろいろと考える彼女に言葉がかけられた。




「もう見つけたよ?」


「??」


首を傾げる彼女にルースがクスクスと笑う。


「それはとても美味しそうな香りで、」


…………食べ物?


「甘い匂いがするんだ、花の香りにも似てる」



………くだもの……?






「こんなに近づくと、噎せるかえるほどだね。


北の果てに咲く真っ白な………」



ぞわりと背筋に何かが這うような感触が走る。


ミラはハッと息を止めて数歩後退った。



視線の先の弧を描く口元が、想像と同じ言葉を紡ぐ。



「百合の香り………」



今頃になって後悔した。





< 122 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop