魔王に捧げる物語
何故気付かなかった?
彼のどこを見れば人と思ったのか。
人なっこい笑顔に隠れた、禍々しいと言っていいオーラ。
意図して隠していたのかもしれない。
だとしたらとんでもないものを招いてしまった。
まとわりつくような毒気と相反する仮面の笑顔、風もないのに靡く銅の髪。
彼は………、
危険だ。
ミラは頭ではわかっていても動けなかった。
ズルリと腰が落ちて座り込む、
その姿を見て、ルースが声を上げて笑った。
「“さがしもの”が自分から出て来てくれるとは、考えもしなかった。
匂いを辿って来たけど、忌々しい雷が鬱陶しくてね……。
でも、領域に侵入を許すなんて……魔王は本当に弱ってるんだねぇ。
いいザマだ!」
ミラを見下ろす瞳が鮮血のように赤くなり、瞳孔が獣のように縦に開く。
圧倒的に“彼ら”とは違う、ルースは………もっと危険だ。
魔王、ニルとは纏う雰囲気が違いすぎる。
引き摺られるような、
そう、
例えるならば………、
混沌。