魔王に捧げる物語



何故気付かなかった?


彼のどこを見れば人と思ったのか。

人なっこい笑顔に隠れた、禍々しいと言っていいオーラ。


意図して隠していたのかもしれない。

だとしたらとんでもないものを招いてしまった。


まとわりつくような毒気と相反する仮面の笑顔、風もないのに靡く銅の髪。


彼は………、




危険だ。



ミラは頭ではわかっていても動けなかった。

ズルリと腰が落ちて座り込む、



その姿を見て、ルースが声を上げて笑った。



「“さがしもの”が自分から出て来てくれるとは、考えもしなかった。


匂いを辿って来たけど、忌々しい雷が鬱陶しくてね……。


でも、領域に侵入を許すなんて……魔王は本当に弱ってるんだねぇ。



いいザマだ!」




ミラを見下ろす瞳が鮮血のように赤くなり、瞳孔が獣のように縦に開く。


圧倒的に“彼ら”とは違う、ルースは………もっと危険だ。



魔王、ニルとは纏う雰囲気が違いすぎる。

引き摺られるような、



そう、


例えるならば………、



混沌。





< 123 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop