魔王に捧げる物語
「ミラ…?」


「いやぁっっ!!」


触られる、そう思い叫んだ。


すると、耳を塞ぐ両手を掴まれる。

これ以上ないくらい力を込めるがびくともしない。
もうダメだ、と思いながら更にきつく目を閉じた。



「落ち着いて。俺だよ、」

……声が違う………?




「ゆっくりでいい、俺を見て」




恐る恐る目を開くと、ミラの手を掴みながら覗き込むニルがいた。


心配そうな顔が映る。



思わず目が熱くなった。
帰って来てくれた、その安堵感が全身に広がる。



「ニル、ニルっ!!」




震えはまだ止まらないが、あの感覚が少しだけ晴れた気がした。



「おいで、部屋に入るよ。だっこしてあげる……」



両手を掴んでいた手が離され、ほら、と伸ばされた腕の中に入る事を少しも迷わなかった。


子供だと思われてもいい。
あのこびりつくような恐怖を少しでも忘れられるなら。


ニルは温かくはないが、いい香とお日様の匂いがする。

ギュッと首に腕をしがみつくと、答えるように腰に回った腕に力がこもった。





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