魔王に捧げる物語


「あの人と…ニルが話すのいや」

「うん」

「……触れるのは………もっといや」


「うん…」

「わたしが知らないこと…あの人っ、いっぱい知ってたっ」


「………」

「苦しくて、悔しかったの、……側にいるのに、知らっ、ないなんてっ」


「ミラ……」


ニルの手がゆっくりと伸びて慎重に涙を拭う。

あまり変わる事のない表情が悲しげだった。


「わたし、何もしらないけど………、


あなたの一番に、なりたかった!


いろんなものを諦めてきたけど、ニルは諦められなかった」



嗚咽を抑え、内に秘めた本心を勢いに任せる。

彼の美しい瞳が見開いた。


わからなかったモヤモヤの正体が、少しづつハッキリとしていくのを自分でも理解していく………。


これが“嫉妬”で、


きっと、こんなどうしようもない想いが本当の




恋、だと。



苦しくて辛くて、不安で嫌になる、……それでも相手を求め、想ってしまうから。


今までの“好き”がどれだけ軽いものか、たった今わかった。






< 146 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop