魔王に捧げる物語
自身が愛しくは想えないが、せめて最期くらいはと力を込めて抱き締めた。
「もっと強く抱きしめて下さい………」
「ああ」
「口付けは望みません……だから、少しだけ言わせて……。
あなたと再び会えただけで幸せです。
魔王になっても、私が柱であっても………愛していました」
「……………ああ」
流れた涙を拭う事はない。
自分は彼ではないから、
「あなたの守る世界に、少しでも手伝えたでしょうか………?」
一途に想う心が………切なくなる。
かける言葉に迷った。
「俺は…………」
「いいのです。
きっと………もうあまり聞こえないから……」
目を閉じた彼女は長く細い息をつく。
「さようなら、雷皇。
迎えに来てくれてありがとう………」
光を帯びて消えていく彼女をただ見つめるしか出来なかった。
安らかに、
それだけを思って。