魔王に捧げる物語
イリージュが光に消えるまでずっと同じ姿でいたが、ざわざわと足音が聞こえ、スッと立ち上がった。
「全軍停止せよ、武器を下げろ!」
聞き覚えのある声が響き振り替えると、いつか見た男が凛とした表情でニルを見つめた。
「………ここで何を?」
面白い。
本当に、
ニルは歪む口元を隠さずに男を見つめる。
「口の聞き方に気をつけよ、覚えがないと言うか?」
「危機的状況だ、民は避難させている。
私はカルナバル皇帝、イオ。
貴殿も速やかに避難してくれ」
腹を抱えたくなった。
魔王にどこへ逃げろと?
クツクツと笑いながら姿を変え、翼を出すと。
凛とした顔が驚愕に変わり、掴んでいた剣を落とした。
「魔王………様?」
遅すぎる確認にバサリと羽音を立てる。
「出世したじゃないか、愚かな兄を蹴落としたか?」
兵士達もニルの姿に呆然とし、その場に立ち尽くす。
イオが慌てた様子で膝をついた。
「ご無礼をっ!」
「構わん。
それより如何用でこの地に赴く?
我が領域にして、禁域だが?」