魔王に捧げる物語
息を飲む姿が滑稽で仕方ない。
ニルは威圧的な口調を崩さずに鋭く見つめた。
「愚兄が何をしたか……わかっているのか?」
「………我々は兄を、エリュオンを追い、凶行を止める為に参りました……」
「時は既に遅い、追跡より災いを止めるべきだ。
滅びたくなければな」
ピクリとイオの眉が動き、空色の瞳を陰らせながらニルを見つめる。
「承知致しました。しかし我々は何が出来ますか……?」
「…………お前だけついておいで、
他は撤退しろ。
従わぬ者は始末する」
パチパチと雷を落とすとたちまちに軍は動揺し、後退った。
魔王の殺気を肌で感じてはいくら豪気な者も立ち向かう事など叶わない。
下手をすれば視線だけでも殺せるだろう。
スッと立ち上がったイオが部下達に撤退を指示し、ニルに近づいてきた。
「私の事はいい、民を守り撤退せよ!
貴殿らは私の誇りだ、ここまで来てくれた事に感謝する!!」