魔王に捧げる物語
「ねえ?この空は醜い?」
ニルは唐突に後ろを歩くイオに言った。
驚きの気配を漂わせながら声が届く。
「醜い………というより、恐ろしいです」
「何故?」
動揺しているのか、言葉を選んでいるのか……?
イオは詰まりながら答えた。
「我々の見る空とは……あまりにも、違いますから…」
「異なことを言うね。
空が崩れた世界だってあるよ、
赤い空なんて夕刻だと思えばいいだろう?」
無茶だとは思いながら彼を見つめると、強張った表情で見つめ返される。
「我々はこのような空よりもずっと酷い世界を見てきたよ……。
生物が次々に絶え、闇に飲まれていく空も……」
生きていた人間たちが見た世界は絶望的だっただろう。
結晶や死臭、崩れた大地や濁った水………。
魔王さえも諦めかけた世界。
「我らは災禍を柱に封じ、膨大な力を尽くしたよ。
美しい世界を守りたかったからね………」