魔王に捧げる物語







色とりどりの花咲き誇る庭園を静かに進むと、

まだ硬い蕾もニルが近付くにつれ綻んで満開になっていく。


その可憐な姿を見つめ、花のアーチを潜ると、目的地が見えてきた。


壮年の男性が優雅に腰を掛け、ニルに気付いたらしく微笑んだ。




「やあ、久しぶりだ」


「そうだね、クラウディオ。皇帝と呼ぶべき?」


「よしてくれ」


こっちだ、とガーデンテーブルに招かれる。


自身が初めて彼と会ったのもこの庭園、それ以降何ども密会した。

鼻を垂らしていた子供が青年になり、やがて成人して家族も出来て、今では国の中枢を掌握する壮年にまでなった。


「感慨深いものだ」


「何がだい?」


「幼かったお前が………すっかり老け込んだという、時の流れ」


「君は……変わらんな」



「魔王だからね」



皇帝が似つかわしくない無邪気な笑顔になった。







< 67 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop