魔王に捧げる物語
色とりどりの花咲き誇る庭園を静かに進むと、
まだ硬い蕾もニルが近付くにつれ綻んで満開になっていく。
その可憐な姿を見つめ、花のアーチを潜ると、目的地が見えてきた。
壮年の男性が優雅に腰を掛け、ニルに気付いたらしく微笑んだ。
「やあ、久しぶりだ」
「そうだね、クラウディオ。皇帝と呼ぶべき?」
「よしてくれ」
こっちだ、とガーデンテーブルに招かれる。
自身が初めて彼と会ったのもこの庭園、それ以降何ども密会した。
鼻を垂らしていた子供が青年になり、やがて成人して家族も出来て、今では国の中枢を掌握する壮年にまでなった。
「感慨深いものだ」
「何がだい?」
「幼かったお前が………すっかり老け込んだという、時の流れ」
「君は……変わらんな」
「魔王だからね」
皇帝が似つかわしくない無邪気な笑顔になった。