月の恋人



――… 神様は どこまでも意地悪だ。




『……陽菜っ!?……あら…』


その日の夜、陽菜が倒れた。


部屋に運んだ後、
気が気じゃなくて
“病院に連れて行かなくて良いのか”と聞いた俺に

オフクロが何とも言えない表情で、言った。


『病気じゃないから、大丈夫よ。あのね、お姉ちゃんの体はね、やっと子供を産む準備が出来たの。もういつでもお嫁さんになれるのよ。』


子供にも易しく分かるようにと、母親は初潮をそう説明したのだろうが

かえって逆効果だった。





“子供を産む準備”

“お嫁さんになれる”



その対象には
俺だけが、当てはまらない。

世界中で、俺だけが。










――…現実を、突き付けられた気がした


―――…その、神様とやらに。








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