月の恋人



夏休みが始まって一週間…つまり

翔がうちに来て、一週間。



たったこれだけの間に

俺と陽菜と翔の三人のバランスは、いとも簡単に崩れてしまった。


一本が倒れたら
他の二本も自立していられない

三角形の性質そのものだ。



俺は

陽菜を見ると、またあの嵐に巻き込まれそうで。

翔を見たら、殴りかかってしまいそうで。

沈黙を保つしか、なかった。



陽菜は、そんな俺を妙に気にするし


翔はといえば

俺に、あんなに敵対心を剥き出しにしたくせに

あれから、努めて陽菜を避けているように思えた。



朝早く起きては、どこかへ出掛けて行き

夜、遅く帰ってくる事もしばしばで。




あのまま
陽菜と翔はくっつくんだろうなと

半ばヤケになっていた俺には、ひどく不可解な成り行きだった。





――…何考えてんだ、あいつ…



そんな疑問は残っても

俺は俺で、とるべき道を見つけられず、八方塞がりの状態だった。







< 171 / 451 >

この作品をシェア

pagetop