月の恋人
夏休みが始まって一週間…つまり
翔がうちに来て、一週間。
たったこれだけの間に
俺と陽菜と翔の三人のバランスは、いとも簡単に崩れてしまった。
一本が倒れたら
他の二本も自立していられない
三角形の性質そのものだ。
俺は
陽菜を見ると、またあの嵐に巻き込まれそうで。
翔を見たら、殴りかかってしまいそうで。
沈黙を保つしか、なかった。
陽菜は、そんな俺を妙に気にするし
翔はといえば
俺に、あんなに敵対心を剥き出しにしたくせに
あれから、努めて陽菜を避けているように思えた。
朝早く起きては、どこかへ出掛けて行き
夜、遅く帰ってくる事もしばしばで。
あのまま
陽菜と翔はくっつくんだろうなと
半ばヤケになっていた俺には、ひどく不可解な成り行きだった。
――…何考えてんだ、あいつ…
そんな疑問は残っても
俺は俺で、とるべき道を見つけられず、八方塞がりの状態だった。