月の恋人



「そんな状態でレンゲ落とされたら、後で掃除すんの俺だからな。そんなの、まっぴら御免。」


「…………!」


何も言い返せない。

なんか…昨日からこっち
あたし、涼に頭が上がらない気がする…


「ほら」


ニヤっとしながら、あたしの口の前でレンゲを揺らす。

反論する元気もなく、差し出されたお粥を食べた。


味なんか分かんないけど、珍しく機嫌が良いから、ほっとこ……


「……も、いい。」

5口くらい食べたところで、ギブアップした。


「…こんくらい、食えよ…お前、それ以上痩せてどーすんだ…」


「…残りは、お昼に食べるから…」


ハァッ、と諦めのため息を吐いて、涼が薬を出してくれた。


「…じゃあ、それ飲んだら横になれよ。俺、今日は一日家にいるから。」


そう言いながら、立ち上がって部屋を出て行こうとする涼を見て、思わず、手が伸びた。



――――… 待って。


「何かあったら呼……」



……完全に、無意識の行動だった。


あたしの手は
涼のTシャツの裾を
しっかり、掴んでいた。










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