月の恋人




「…………涼?…」




――…そんなに

切ない表情をするのは

どうして?




――…分からないことだらけだ。





だけど

涼が傷ついたような顔をするから


思わず、謝罪の言葉が出た。



「ごめんね……?」




………あたし、涼を困らせてる?




そうだよね。

いつまでも、姉がこんなだから

“世話が焼ける”って
思ってるよね。



―――… 恥ずかしい。


あたし……
なに、弟に甘えてるんだろ。

しっかりしなきゃ。



いつも、いつも
隣にいてくれたから。

この温もりに
頼りきっていた。




「……あたし、もう、……甘えないようにするからっ…」


声が震える。

ほんとうは―――…



こんな事、言いたくないから。









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