月の恋人







さすがに、この天気ではお客さんもいないのか
夜にも関わらずネオン街は閑散としていた。



時間が経つにつれ、真っ直ぐ歩くのが精一杯なくらい、雨と風は勢いを増してきていて、あたしの足元は既にグショグショだ。



「レインブーツ、履いてこれば良かった…」




歩いても

歩いても


翔くんがいた、あの地下への通路が、見つからなかった。


どこの角を曲がっても似たような路地と看板が連なっていて、迷路に迷い込んだような気分になる。






あの場所は、本当にあったのかな…


そんな疑問さえ湧いてくる。






――… 『もう、ひとりで、あんなとこ行くなよ』




昼間の涼の言葉が頭をかすめた。







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