月の恋人



「…… ふたりは、仲良しだねぇ。結婚式が、楽しみだわぁ。」



そんなあたし達の様子を見て

おばあちゃんが、カラコロと笑う。




「えぇっ!?いや、あの…おばあちゃん、そういう事じゃ…」



クスクス、

翔くんが笑いながら、照れて否定しようとしたあたしの手を握った。





「うん、だからおばあちゃん、長生きしてよね。」


「ふふふ、そうしようかねぇ…」






おだやかな





ほんとうに、おだやかな、その午後を




あたしは、忘れない。






おばあちゃんが

ぽつり、何気なく漏らした一言に



なにか… 不安を覚えた


夏の、陰りを―――…






……… 




「じゃあ… 涼くんは、これで心置きなくあっちへ行けるねぇ…」





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