月の恋人
◆
「お邪魔しました。おばあちゃん、またね。」
別れを告げて外へ出ると、
アスファルトから上がってくる熱気が全身を包んだ。
見上げた空は、真っ青で。
白い大きな入道雲が、もくもく、と上へ伸びていた。
その気持ちよさそうな白い塊をぼんやり目に映しながら
あたしは、さっきのおばあちゃんの一言が、
気になって気になって、仕方なかった。
“涼くんは、心置きなくあっちへ行けるね”
あっちへ…って 、どういうことだろう?
どこへ行くというの?
あたしの
あたし達の家以外の、どこへ、行くというの?