月の恋人







「お邪魔しました。おばあちゃん、またね。」




別れを告げて外へ出ると、

アスファルトから上がってくる熱気が全身を包んだ。



見上げた空は、真っ青で。

白い大きな入道雲が、もくもく、と上へ伸びていた。





その気持ちよさそうな白い塊をぼんやり目に映しながら

あたしは、さっきのおばあちゃんの一言が、

気になって気になって、仕方なかった。






“涼くんは、心置きなくあっちへ行けるね”







あっちへ…って 、どういうことだろう?


どこへ行くというの?



あたしの

あたし達の家以外の、どこへ、行くというの?




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