月の恋人
「… ちゃん…… 陽菜、ちゃんっ!待って、そっちじゃないよ。」
「あ… 」
後ろから腕を掴まれてようやく気付くと、
あたしはひとりズンズンと先に行ってしまってたらしく
翔くんの制止の声も、聞こえなくなっていた。
「この道じゃ、反対方向だよ、陽菜ちゃん。どこかへ、行くの?… どうしたの、さっきから。」
「な…んでも… ごめん、ぼーっとしてたら、道間違えちゃったみたい。あはは、暑さにやられちゃった、かな…」
「陽菜ちゃん…」
―――… 翔くん?
どうして、そんな悲しそうな顔を、しているの?
翔くん、らしく、ないよ。