月の恋人
―――… 甘えんぼさんだな…
そう、思ったとき
背中に回っていた翔くんの腕が
急に力を強めて、
痛いくらいにあたしを締め付けて
全身に、緊張が走ったのを、感じた。
押し付けられた胸が
急に鼓動を速めたのが、わかる。
「―――… 翔くん? どうし…」
でも…
続いて
あたしの、背後から小さく聞こえた、その声に
今度は、あたしが身体を強張らせる、番だった。
…………
「往来の真ん中で、何やってんだよ…お前ら…」
それは―――…
あたしがずっと
聞きたくて、聞きたくて仕方なかった愛しい声。
会いたくて、会いたくて仕方なかった…
「……… っ!!」
――――… もう、声にならない
待ちわびた、再会だった。