月の恋人
―――…苦しい。
苦しい。 苦しい。 苦しい。
診察室で、大人たちの会話を聞いていると、息が詰まりそうだった。
前に、自分がどうやってしゃべっていたのかわからない。
声を出そうとしても、やっぱり 口は空白の息を吐くばかりだった。
「まずは、不安要素を取り除いてあげることが大切です。ストレスになっていることの原因を解決しないと、病状は改善しませんから。」
まるで張り付けたみたいなのっぺりした笑顔で、お医者さんがそう言った。
ママと揃ってこっちを見た、その顔が、なんだか仮面みたいに見えた。