月の恋人




―――…苦しい。






苦しい。 苦しい。 苦しい。




診察室で、大人たちの会話を聞いていると、息が詰まりそうだった。




前に、自分がどうやってしゃべっていたのかわからない。

声を出そうとしても、やっぱり 口は空白の息を吐くばかりだった。






「まずは、不安要素を取り除いてあげることが大切です。ストレスになっていることの原因を解決しないと、病状は改善しませんから。」




まるで張り付けたみたいなのっぺりした笑顔で、お医者さんがそう言った。


ママと揃ってこっちを見た、その顔が、なんだか仮面みたいに見えた。






< 343 / 451 >

この作品をシェア

pagetop