月の恋人







ママが、行動に出たのは、早かった。


病院から戻ると、リビングで翔くんが待っててくれた。
不安を隠そうともせずに。




―――…心配して、くれたんだ。





そう、だよね。

あたしの声が出ないってことは… 歌えないってことだもんね。

そしたら、“アナザー”はどうなるんだろう。

また新しいコーラスの女の子を捜すのかな…?

そしたら、あたしの、居場所は… 無くなってしまうのかな…




いろんなことが一気に頭を巡った。




「おばちゃん、陽菜ちゃん… どうだったんですか。」


あたし達が部屋に入った瞬間、
翔くんはママに駆け寄ってきた。




「翔くん。ちょっと待って。落ち着いて、ゆっくり話を聞いて。」



そしてママは

さっきのお医者さんの説明を、翔くんにそのまま繰り返した。





――――…



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