月の恋人
◆
ママが、行動に出たのは、早かった。
病院から戻ると、リビングで翔くんが待っててくれた。
不安を隠そうともせずに。
―――…心配して、くれたんだ。
そう、だよね。
あたしの声が出ないってことは… 歌えないってことだもんね。
そしたら、“アナザー”はどうなるんだろう。
また新しいコーラスの女の子を捜すのかな…?
そしたら、あたしの、居場所は… 無くなってしまうのかな…
いろんなことが一気に頭を巡った。
「おばちゃん、陽菜ちゃん… どうだったんですか。」
あたし達が部屋に入った瞬間、
翔くんはママに駆け寄ってきた。
「翔くん。ちょっと待って。落ち着いて、ゆっくり話を聞いて。」
そしてママは
さっきのお医者さんの説明を、翔くんにそのまま繰り返した。
――――…