月の恋人
「失声症…」
翔くんがその病名を静かに口にする。
まるで、言葉を噛み締めて、現実を受け止めようとするように。
「ここのところの急激な環境の変化が原因じゃないかってお医者様は仰っていたのよ。だからね、まずは……」
と、ママは言葉を切ってチラリと私を見た。
「――…あぁ、ちょっと待って。この話は落ち着いてからにしましょう。とりあえず、陽菜は楽な格好に着替えてらっしゃい。」
―――…
うかつだった。
あたしを出て行かせたママの意図に
あたしは全然気付かなかった。
このあと
ママは、あたしのいなくなったリビングで
翔くんに、告げたんだ。
「この家から出ていけ」って―――…