手と涙 〜婚約者はピアノ講師〜
柚香はふ-っとひとつ、

ため息をつくとジュースの入ったグラスを手にした。



ふと、主役の2人へと視線を動かすと

花嫁と目が合う。


すると、輝く指輪を付けた左手で

小さく柚香へ手を振ってきた。

ふわりと柔らかな、

幸せ溢れる笑顔とともに。



柚香はつられるように

微笑みを返しながら頭をペコリと下げた。



「………

キレイだな。

朱里(あかり)さん………」



その様子を見ていたらしい涼太が、

ぽつりとつぶやいた。



さっきまであんなに料理に夢中だったはずの

手も口も、ピタリと止めて。



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