手と涙 〜婚約者はピアノ講師〜
そのままゆっくりと目を閉じる。


小高い丘の上にある式場のせいか、

吹き抜けていく風が少し冷たく

そして透明な気がした。



ここは一日一組限定。

アットホームな式や

披露宴が行えるということで

今すごく人気なんだと

朱里が教えてくれた。



(あー・・・やばい。

また泣けてきたわ・・・。


ホント、諦め悪いなぁ・・・私)



涙が頬を伝わらないように

更にぎゅっと瞳を閉じて

やり過ごそうとする。



そこからともなく漏れ聞こえる

笑い声・・・。



(今・・・二人を祝福出来ていないのは

私だけなんだろうな・・・)



そう思った時だった。



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