手と涙 〜婚約者はピアノ講師〜
「みぃーつけた~!!」


目の前に誰かが立った気配がして

ハッとすると、

見覚えのない男がそこにはいた。


柚香はサッと目元を拭うと

身をこわばらせた。


そんな柚香に構うことなく



「探したんだよ~、キミのことぉ」



間延びした、猫撫で声で

ベタベタと喋ると

柚香の隣にどかっと座り込んだ。


反射的に柚香は端へと寄る。


相当飲んでるのだろう。


酒の不愉快な匂いが

鼻を衝く。



思わず眉間にしわが寄る。



男は体ごと柚香のほうへ向くと

上から下まで撫で回すような目で

眺め、ニヤリと笑った。



(・・・何この人・・・

気持ち悪い・・・)



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