あやめ
軽々と抱きあげられ、改造したバイクのタンデムシートに乗せられた。
隆もそれにまたがり、あやめの手を持って自分の腰に巻きつけた。
うるさい音をたてながら、けれどゆっくりと発進したバイクの上で、あやめはその背中にしっかりと抱きついた。
初めてのバイクが怖いせいだと、心の中で言い訳しながら。
隆の背中は大きく、父親のぬくもりを思い出させる。
あやめの目が、じんわりと濡れた。
隆は、あてもなくバイクを走らせた。
この街に来てから、学校と家の間しか往復していない、しかもいつも下を向いて歩いていたあやめにとって、目に映るもの全てが新鮮だった。
見上げれば空は青く澄んでいて、まるで自分が羽を持ったような錯覚に襲われる。