クマさん、クマさん。


-菜摘side-



プッ

プッープッー


朋秋と久しぶりに話したな・・・。



別れる直後に初めて見た悲しそうな顔をした朋秋・・・。


その時の朋秋の表情がずっと忘れられなかった。






あたしの心の中にはずっと空也がいた。


そして朋秋はあたしの他に女がいた。



付き合っていて、あたしたちは"恋人同士"ではなかった。





だから別れをあたしが朋秋に伝えても、朋秋は笑って了承すると思っていた。



・・・・―――――でも現実は悲しい顔をした朋秋。






朋秋と別れて4年・・・。


朋秋を思い出したらあの時の表情が頭の中に浮かんでいた。



でも・・・――――――



「朋秋ももう前に進んでいるんだね」



今日の電話でやっと、あの時の朋秋の表情を忘れられる。



・・・もう朋秋を思い出す時は、付き合っていた時の優しい笑顔だ。



「ふぅん・・・好きだった人か・・」


「空也っ」


「パパっ」


振り返ると、手を組んでニヤニャ笑っている空也がいた。


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