クマさん、クマさん。
「菜月《ナツキ》、おいで」
娘の菜月は喜んで空也の胸に飛び込む。
空也は菜月を抱っこした。
「パパいつ?」
菜月にとっては、いつ帰ってきたの?という意味だ。
「今さっきだよ。菜月良い子にしてた?」
「してたよっ」
「菜月は良い子だね」
「うんっ」
空也は笑って菜月の頭を撫でながらあたしに近づいて来た。
「お、おかえり」
「うん。ただいま」
あたしの頭の中では危険信号が鳴っている。
・・・やばい。
空也がキレてる。
「菜月?」
「なに?パパ」
「パパね、菜月のために絵本買って帰ったんだ」
「本当っ!」
「うん、ほら」
空也は絵本を菜月に渡した。
「わぁ―っ!やった!ありがとう、パパ」
「どういたしまして。菜月、あっちの部屋に行って絵本読んでなさい」
「分かったっ」
菜月は絵本を大事そうに抱きしめながら隣りの部屋に走って行った。
「さて」
空也はあたしの顔を見てニッコリ笑った。
「どういうこと?」
「あははは・・・」
「ごまかさないでよ」
「・・・」