クマさん、クマさん。
ザワザワ
ザワザワ
「・・・菜摘?」
「え?・・・あ、朋秋?」
「うん、懐かしいな」
「そうだね・・・最後に会ってから・・・もう10年ね」
「俺たちも歳とったな」
「そうだね」
「そういえば、あの時の子供は?ほら、俺が電話してた時に"ママ~"って言ってたガキ」
「菜月でしょ?あの子今年で9歳だよ」
「大きいな!」
「そうかな?・・・朋秋も」
俺の左手に目線をやる。
「ん・・・今日がなんと結婚記念日で3年目だ」
「本当!?おめでとう」
「ありがとう」
「・・・朋秋」
「ん?」
「良かったね」
「おぅ・・・まだ子供には恵まれてねーけど、俺は幸せだよ」
「うん・・・」
菜摘は嬉しそうに涙を流した。
「菜摘、ありがとう」
「あたしも・・・ありがとう」
俺も菜摘も笑っていた。
心から笑っていた。
大切な人から貰った笑顔で笑っていた。
「じゃあな」
「うん」