水島くん、好きな人はいますか。
「よかったなー、万代。やっと解放されて」
微笑む水島くんに、どことなくからかわれている気がする。
「マヨマヨがいちばん必死だったからね。僕らもやっと安心できたよ」
「見てるこっちがハラハラしたもんねえ。自分より万代が受かったって聞いたときのほうが嬉しかったよ、あたし」
ハカセにみくるちゃんまで……。たしかに必死ではあったけど、そんなに心配してくれていたなんて。
「えと……あの、ご心配お掛けしました」
申し訳ないなあ……と感じての言葉だったのに、吹き出した水島くんはとても失礼だと思う。けれど、どうしてかみんなも笑いを堪えているようで、急に不安になる。
「え? な、なに? わたし、そんなに変なこと言った? ちゃんと高等部に進めるよ?」
ぶはっと吹き出し、声高に哄笑するのは水島くんと、みくるちゃん。
りっちゃんは「わかってないなあ」なんて言いながらジュースを呑み、ハカセは「マヨマヨの鈍さってすごいよね」と親指を立ててくる。
「おめーはほんっとバカだよな。引くわ」
瞬に引かれたって痛くもかゆくもないけど、みんなには引かれたくない。
おろおろすると、また涙が出るまで笑ったらしい水島くんが目尻を拭いながら言う。
「外部受験を勧められちょらん時点で、セーフだって気付かんかった?」
「――……え?」