水島くん、好きな人はいますか。

「よかったなー、万代。やっと解放されて」


微笑む水島くんに、どことなくからかわれている気がする。


「マヨマヨがいちばん必死だったからね。僕らもやっと安心できたよ」

「見てるこっちがハラハラしたもんねえ。自分より万代が受かったって聞いたときのほうが嬉しかったよ、あたし」


ハカセにみくるちゃんまで……。たしかに必死ではあったけど、そんなに心配してくれていたなんて。


「えと……あの、ご心配お掛けしました」


申し訳ないなあ……と感じての言葉だったのに、吹き出した水島くんはとても失礼だと思う。けれど、どうしてかみんなも笑いを堪えているようで、急に不安になる。


「え? な、なに? わたし、そんなに変なこと言った? ちゃんと高等部に進めるよ?」


ぶはっと吹き出し、声高に哄笑するのは水島くんと、みくるちゃん。


りっちゃんは「わかってないなあ」なんて言いながらジュースを呑み、ハカセは「マヨマヨの鈍さってすごいよね」と親指を立ててくる。


「おめーはほんっとバカだよな。引くわ」


瞬に引かれたって痛くもかゆくもないけど、みんなには引かれたくない。


おろおろすると、また涙が出るまで笑ったらしい水島くんが目尻を拭いながら言う。


「外部受験を勧められちょらん時点で、セーフだって気付かんかった?」

「――……え?」
< 191 / 391 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop