水島くん、好きな人はいますか。

わたしが今までどれだけB判定に落ち込み、次こそはと息巻いていたのか、みんなは知ってる。


落ち込み過ぎだとか、受かるとか、頑張ろうねって言ってくれたことはあったけど……。


外部受験を勧められてないんだから大丈夫、とか。自分は面談で注意されたことあるから安心しなよ、とか。他に、もっと……。


おそるおそるみんなの顔を見ると、やっぱり笑われているような気がして、かーっと頬が一気に熱くなった。


「教えてよぉーー!!」

「あははははっ!」


真っ赤になるわたしに、みんなが声を出して笑う。


瞬だけはバカにしたように嘲笑したから、悔しくて腕を叩いた。


「瞬が教えるなって言ったんでしょ!」

「教えたらお前は息抜きばっかするじゃねえか」

「わたし無駄に頑張ってたってことになるじゃないっ」

「はあ? なにが無駄だ、ふざけんな。おかげで成績上がっただろーが」


うっと押し黙れば、瞬はにやにや笑いながら「どうした」なんて。


「感謝しろよ、この俺に」


本っ当に腹立たしいったらない。それ以上に、がむしゃらになっていた自分が恥ずかしい。それ以上にもっと、またみんなと3年間一緒にいられることが、しあわせ。


「おい万代。『手のひらの上で転がしてくださってありがとうございます』が聞こえねえぞ」


また始まったよ……と言うような表情のみんなに、同感する。だけどやっぱりみんなの空気も、わたしの心も、綿菓子みたいにふわふわしてる。


この感じならきっと、許されるよね?
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